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十九歳の初夏に上州渋川村を飛び出し、江戸へ出た百姓・茂平。口入れ屋の飯岡一家に世話になり、さらには、寺田道場の内弟子時代に茂平の人柄を見込んだ北町の同心神岡冬右衛門の養嗣子に迎えられ、定町廻り同心の役目を世襲して、数年が経っていた。ある日、寺田家の四男・鈴之丞が長崎へ遊学に出ることを聞きつけ、茂平は小日向茗荷谷へ向かった。鈴之丞は、両親の愛情を知らず、暴慢の輩と成り果てていたが、茂平の助言で改心し、蘭学者の途を目指していた。が、鈴之丞はとんでもない相談を茂平に…。書下ろし長篇人情時代小説。