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八万点の国宝を伝える最後の秘境 玄界灘を航行する船は激しく揺れている。ふつうの人なら立って歩くことすら困難な状況の中、船の舳に立つ藤原新也は、足元を支えながら前方に見えてきた島影に挑んだ‐‐。玄界灘の荒海に浮かぶ沖ノ島。島全体が御神体であり、女人禁制。一般の人の入島は厳しく制限され、一木一草一石たりとも持ち出してはいけないという掟を今なお守り続けている。入島の際には一糸まとわぬ姿となって海水で禊をしなければならないこの島は、四世紀から九世紀にかけて国家による祭祀が連綿と続けられてきた。古代人は島内に点在する巨岩巨石を磐座とし、日々祈りを捧げ続けてきた。奉納された御神宝は十数万。昭和になって初めてその全貌を現わした品々は八万点が国宝に指定され、今も多くの御神宝が島に眠っている。自然に対する“祈り”と“敬い”の並々ならぬ強度を目の当たりにした藤原新也(写真家)が幻想的な島内を撮影。直木賞受賞の作家安部龍太郎がこの地を支配した古代宗像一族の謎に迫る。