三味線などを持って、客席に出る芸者に従って行く男衆“箱屋”になった松方兆治。人生経験豊かな初老の職と相場が決まっていたが、兆治は19歳で箱屋の職に就いた。「新吉」と名乗った彼は、半玉の女子大生に出会い、淡い恋心を抱いていた。だが、深川はもちろん花街では、芸者や料亭の女将と懇ろになるのは御法度だった。しかし新吉は、寄宿先の妖艶な夫人に童貞を奪われたのを皮切りに、美人女将や人妻、三味線弾きに誑かされながらも、一人前の男として成長していく。そして許されぬ“花街の掟”の中で、若い二人は…。著者渾身の力作。