「国破れて山河在り」「昔聞く洞庭の水」「白髪三千丈」…。古来、誰もが暗誦した唐代の名詩。その作者たちは、多くが科挙の合格者であり、青春の輝きを謳歌した。しかしまもなく世知辛い現実に直面して、エリートだった自分もまた敗者であるということを知った。酒食に憂さを晴らし、友と別れ、旅情に涙し、望郷の念に胸を焦がしながら、詩作にわが身の哀歓をぶつけたのだ。当時の詩人たちの心情が、現代日本人のそれと何ら変わらないのに驚かされるだろう。本書では、字句や文法の吟味は横において、詩本来の内容やリズムを肌で感じられるような訳39611