雅楽とはなんだろうか?「ああ、神社の音楽でしょ」などと言い切られてしまうと、僕はちょっとがっかりしてしまう。雅楽とは音楽だけではない。思想であり、哲学であり、天文学であり、礼節や作法であり、科学や統計学でもあるのだ。平安時代に成立し、気の遠くなるような歴史と完成度を持つ雅楽の継承者として、いかに雅楽が深い世界観を持っているかを、正しい知識とともに理解してもらいたいと思い、本書を書いた。篳篥、笙、龍笛、箏などの楽器、舞楽の装束、楽曲の意味や構成。雅楽を鑑賞するための手引きとして、東儀秀樹の音楽をより身近に感じてもらうための案内役として本書が活用されたらうれしいと思う。