20世紀は短歌が日本文化内で「再誕」した時代であった。特に盛況を迎えた60年代から80年代前半において、その契機となったのは、ジャンルを超えて活躍しはじめた女性たちの力であった。万葉以来の伝統を誇る短歌の世界に、彼女たちが及ぼした影響はなんであっただろうか。みずからの身体で感受した美意識が、重い社会のくびきから何を解放したのだろう。本書は現代短歌に挑戦しつづけた女性歌人たちの作品を、通史として歴史のダイナミズムのなかで俯瞰する、初めての試みである。30人に上る女性歌人たちの作品が奏でる調べは、哀しく愛しく美しく読者の胸に共鳴する。