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の遺志を継ぎ、藩閥と戦った男達の物語 明治初期、西郷隆盛の精神を継ぐ者達と、専制に堕落した政府との新たな戦いが始まった。これは戦後、GHQの占領政策で「右翼」のレッテルを貼られた頭山満と玄洋社が、近代国民国家の建設に身命を賭した物語である。民主主義はGHQによって与えられたのではない。「広く会議を興し、万機公論に決すべし」──1868年に天皇が天地の神々に誓う形式で示された『五箇条の御誓文』の第一条には、民主主義の精神が盛り込まれている。ところが薩長藩閥が牛耳る明治政府はその方針とは裏腹に、民の声を無視し、専制を強めていく。「維新」とはこんなはずではなかったと立ち上がった志士たちは「不平士族」とのレッテルを貼られ、今日もその偏見が幅を利かせている。板垣退助や植木枝盛らと交流し、玄洋社を設立した頭山満は、欧米の帝国主義と戦うべく、アジア主義を掲げて奔走した。欧化政策に突き進む明治政府と対峙した彼もまた、戦後、GHQによって「右翼」のレッテルを貼られる。民の側に立って藩閥政府の専横と戦った明治の志士たちに光を当て、忘れられた日本人の民主主義を勝ち取るための闘いを描く意欲作。【編集担当からのおすすめ情報】 単行本化にあたって収録した「特別描き下ろし 私擬憲法という挑戦」は、憲法改正を安倍政権が掲げる今、大変読み応えのある内容です。著者は、昨今の憲法改正論議を見て、「護憲派は、現行憲法を守りさえすればいいとしか思っておらず、改憲派は変えさえすればいいとしか思っておらず、両極に閉じこもって思考停止している」 と痛切に批判します。かつて、わずかな期間ではありましたが、日本人が真剣に自分たちの憲法を作ろうとした時期がありました。それがまさに本作品で描かれている「自由民権運動」の時代です。私たちの先祖が憲法を作るために、多くの血と汗を流してきたことが物語を通じて感じられることでしょう。なかでも、特別描き下ろしでは、自由民権運動において盛んに民間で作成された「私擬憲法」を取り上げ、徹底的に比較しています。当時の知識人たちが憲法制定にあたって、何に腐心していたのか、明瞭になるかと思います。改憲派も護憲派も、政治的思想に関係なく、憲法を知る上で必読の書です。