明治維新こそが近代の「夜明け」であるという認識が、一般の日本人にとって、ごくあたりまえの通念である。本書は、激動の時代を駆け抜けた三人の幕臣たちの生涯を取り上げながら、そうした歴史通念に異を唱えた一冊である。反射炉やお台場築造に関わった先駆的な行政官・江川太郎左衛門英龍、ペリー艦隊と最初に接触した人物にして、日本初の西洋式帆船の建造者である中島三郎助永胤、そして、船舶技術や国際法の知識を総動員して、近代日本建設のいくつものプロジェクトのリーダーとなった榎本釜次郎武揚。日本の近代は、幕末期の技術系官僚たちによって準備され、すでに始まっていたのである―。