長く特派員としてアメリカ社会の変容を見つめてきた著者が、「社会の座標軸がズズッと右にずれたような変化」を感じ始めたのは一九九〇年代半ば。アメリカ国内で繰り返される不可解なテロ、中絶や同性愛をめぐる深刻な軋轢、信仰の熱心さが生み出す分極化―文化の多様性を拒む何かが、地下からはっきりと姿を現していた。現地での取材、インタビューを積み重ね、著者は、その源流が清教徒による建国思想、過激な反連邦政府意識、白人優越主義などに端を発する、「アメリカ原理主義」ともいうべき宗教右派の動きに結びついていくのを知る。