ローマは泉の町である。トレーヴィの泉や四大河の泉などは、多くの観光客を集めてにぎわっている。そもそもローマには二〇〇〇以上の泉があるといわれているが、その起源は古代ローマ時代、水道の終着点に記念碑として造られた壮大な泉にある。その伝統を踏まえ、近世以降、美しい彫刻とあふれ出る水が一体化した華麗な泉が数多く造られた。古代ローマから教皇の時代、ルネサンスを経て現代にいたる都市の栄枯盛衰は、そのままローマの泉の物語と重なる。英雄が吼え、女神が微笑み、精霊が語るローマの歴史と芸術。泉を訪ね、泉の深層を幻視すれば、もうひとつのローマが見えてくる。