二十四年の短い生涯に、近代文学に燦然と輝く名作を残して逝った樋口一葉。その象徴性に満ちた文学は、江戸から明治、古典から近代文学へという時代に生まれ、そのどちらをも超えた魅力をはなち、現代に読みつがれている。本書では、代表的五作品『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』『わかれ道』をあらゆる角度から読みこむ。遊廓吉原のにぎわい、西鶴など、江戸から当てた光はまったく新たな世界を浮かびあがらせ、登場人物たちの心情への鋭い考察は、“人間・一葉”の真実に迫る。「いやだ!」といいながら、困難な時代に立ち向かった一葉の魂のメッセージを伝える著者渾身の評伝。