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[要旨]
若き日に科挙を目指すも果たせず、のちには中央政界の思惑とあいつぐ戦乱に翻弄された杜甫の境涯は、まさに「憂愁」と形容するにふさわしい。しかし彼は、しばしば挫折と流浪を経験しながらも、いやそれゆえにこそ、厳しい現実と常に対峙し、自己をとりまく家族、友、社会、そして自然に温かいまなざしを注ぎつづけた。その強靱な精神こそが、「詩聖」を誕生させたのである。中国詩史のなかの杜甫の位置を丁寧におさえたうえで、その生涯を辿りながら詩の魅力を存分に味わう。待望の新「杜甫詩選」。
[目次]
第1部 書物の旅路―杜甫に到る道(中国詩史の中の杜甫
杜甫の今体詩
杜甫の古体詩)
第2部 作品世界を続む―杜甫の詩境を探って(酔っぱらい賛歌
戦争はむごいなあ
戦乱の中で―離別と再会
曲江のほとりで
流浪の始まり―秦州・同谷から成都へ
李白よ
成都草堂の平安
旅路の果てに…)