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[要旨]
あまりにも大きな犠牲を払った先の大戦において、「軍部の独走を止められなかった天皇の責任」という言い方がしばしばなされるが、本当にそれは正しいだろうか?さまざまな天皇論が語られるなか、著者はそれ以前に「昭和天皇の自己規定」を解明しなければならない、と説く。昭和天皇は、自らが天皇であることをどのように考え、そこからどう行動を導いてきたのか。東宮御学問所における教育から、戦争中の発言までを通して、「立憲君主」としての昭和天皇を解明した、山本七平の渾身作。
[目次]
天皇の自己規定―あくまでも憲法絶対の立憲君主
天皇の教師たち(1)―倫理担当に杉浦重剛を起用した時代の意図
「三種の神器」の非神話化―道徳を絶対視しつつ、科学を重んじる杉浦の教育方針
天皇の教師たち(2)―歴史担当・白鳥博士の「神代史」観とその影響
「捕虜の長」としての天皇―敗戦、そのときの身の処し方と退位問題
三代目「守成の明君」の養成―マッカーサー会談に見せた「勇気」は、どこから来たか
「錦旗革命・昭和維新」の欺瞞―なぜ、日本がファシズムに憧れるようになったのか
天皇への呪詛―二・二六事件の首謀者・磯部浅一が、後世に残した重い遺産
盲信の悲劇―北一輝は、なぜ処刑されねばならなかったか
「憲政の神様」の不敬罪―東条英機は、なぜ尾崎行雄を起訴したのか
三代目・天皇と、三代目・国民―尾崎行雄が記した国民意識の移り変わりと天皇の立場
立憲君主の“命令”―国難近し、天皇に与えられた意思表示の手段とは
「人間」・「象徴」としての天皇―古来、日本史において果たしてきた天皇家の位置と役割
天皇の「功罪」―そして「戦争責任」をどう考えるか
「平成」への遺訓