北井は,年譜にもあるように,旧満州の鞍山の生まれである.当然、当時のことは知るよしもないが,北京は北井の母にとっての曾遊の地であり、わずか一度であったが生涯忘れられない土地であった。
1972年、日中国交回復後、北京を訪れた北井は,母が繰り返し語った,夢の中を歩いているような」まちなみと出会って感動する。
その20年後訪れた北京は,やはり静かで落ち着いたまちであったが,それは長くは続かなかった。
熱い経済が開始され,日本の高度成長経済とバブル経済が一緒になったような狂乱の時代を迎えた。
本書は,その中にあっても,静かで落ち着いた暮らしを続ける北京市民の当時の姿を写し出している。