本書は、富士山信仰の中でも主として修験道との関わり、特に山岳霊場としての富士山に注目して検討を加えたものである。富士山は静岡県・山梨県にまたがって存在し、各時代に複数存在した登山口ごとにその拠点に信仰登山集落を形成したが、本書はその中でも、静岡県側の表口登山口(大宮口・村山口。静岡県富士宮市)を考察の対象としている。
表口を対象とした理由は、各登山口の中でも比較的早い段階に開削されていたと考えられること、表口の名称が示すように中世には登山口の中心と捉えられていたらしいこと、そして何より修験道との関係が深いことによる。