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著者の晩年の代表作の一つ、「東京裁判三部作」(『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痂』)制作過程で、上演母体となった新国立劇場の担当者に送られた膨大な手紙や資料から、作品創造の苦闘や秘密を明かす貴重な記録。作品の構想を練り、台本を執筆していく著者の姿が、これほど具体的に公開されたのは初めてで、著者もいずれ発表されることを予期していたフシがうかがえる。本書ではそれぞれの作品について、日付順に担当者に送られたファックスを中心に、打ち合わせ時での発言内容、場面構成表、付随する資料などが示され、併せて読者に理解しやすいよう、適宜担当者による解説を加え、まるで台本ができるまでが「ひとつの物語」であるかのように構成されている。また、実際の舞台と初期アイデアが大きく異なっている点が明かされたのも、本書の魅力だろう。たとえば紙芝居屋が主人公となった『夢の裂け目』は当初、戦後大船にあった捕虜収容所の所長の物語として考案されていた。締切ぎりぎりの著者の苦悩もまた、読者の心をとらえる。『夢の痂』上演直前に著者の妻の姉である米原万里さんが死去。自らを奮い起こす姿も赤裸々に語られている。