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「野蛮」を照らし返す精神の輝き民族固有の文化を圧殺された上、環境汚染・資源枯渇など全般的な存在の危機に直面するチベット。北京に「国内亡命」を余儀なくされ、〝一人のメディア〟として創作と発信を続けてきたチベット出身の女性詩人が、闇に隠された「秘密」に澄明な光を当てる。王力雄「チベット独立へのロードマップ」及び編訳者による「雪の花蕊─ツェリン・オーセルの文学の力」を併録。私たちは、彼女の詩やエッセイから、廃墟となった古刹、町中にあふれる兵士や警官、地響きを立てて進む戦車や装甲車、狙撃されて倒れる少女、背後に光る目、連行、拷問、投獄、処刑、逃走、抵抗、抗議の焼身自殺等々を読みとることができる。そして、読後には加害者の凶悪な姿か、抵抗者の尊厳ある偉大な姿か、人間としていずれを選ぶべきかと考えさせられる。このような意味で、オーセルの詩は(中略)ロマンチックなメルヘンでも、さらに政治的な告発でもなく、「野蛮」な暴力の前であまりにも脆く儚い人間を愛惜しつつ、なおまた人間にとって何が大切なのかを照らし出す柔らかで奥深い輝きである。(劉燕子「雪の花蕊」より)