「ありがとう。ほんとうに、ありがとう」事故に遭った車から、祖父とともに助け出された女性は、息をはずませてそう言った。ジョージは偶然その場に居合わせた幸運に感謝した。勤務明けの病院から、車でデートに向かう途中ではあったけれど。彼の応急処置で、彼女の祖父の心臓の鼓動がよみがえったのだ。女性の目にどっと涙があふれ、不意に彼の首に両腕を巻きつけてくる。次の瞬間、彼女はジョージにキスをした。思いを込めて。そしてあわてて体を離した。衝動的なキスを恥じらうように。ジョージはもはやデートのことも忘れ、彼女の微笑に見とれていた。いつも女性をとりこにする、魅惑の笑みも浮かべられずに…。